このブログでは、物件探しの話を徹底的にしたいと思います。長文ですが、宿を開業したい人は我慢して読んでください。

そもそも宿泊ビジネスは店舗ビジネスなので、当たり前ですが物件がないと始められません。ここが参入障壁というか、物件自体はあるのですが、きちんと利益が出せてお客様にも喜んでもらえるような優秀な物件は本当に少ないです。

「宿でもやろうかな〜っ」て軽い気持ちで物件を探すと何度も心が折られます。

民泊物件探しの本質

物件を探す方法をお伝えする前に、まずは宿物件の本質を3つご紹介したいと思います。

物件はロケーションが命

1つ目はロケーションです。
伝え方が9割というベストセラー本がありましたが、宿泊業の場合は、ロケーションが9割です。おしゃれな雰囲気、素晴らしい接客を提供したとしても、立地が悪ければすべてが水の泡と言う訳です。

駅や観光地に近い、海が目の前など、あなたがターゲットとするお客様にとって便利な場所であることが大切です。ホテルは不動産事業の延長線上にあるので、極論は立地ビジネスです。内装やコンセプトは後でお金をかければ変更可能ですが立地は簡単に変更できません。

ホテルと比較して差別化できる物件が必要

物件探しの本質2つ目は、ホテルと比較して差別化できる物件を探すことです。

なぜか?
そもそも大前提として宿泊施設というのは供給過剰なんです。飲食店と一緒ですね。で個人でつくる民泊やゲストハウスなどの宿泊施設というのは、大きなホテルや旅館と戦ってはダメなんです。あの人たち、資本があるので、正面突破しようとする必ず負けてしまいます。

なので、いかに大きなホテルが提供していないニッチなカテゴリーを探すかが重要なポイントです。

差別化できるポイントはロケーションもそうですが、それ以外にも例えば、

  • BBQ
  • ペット
  • 4人以上の大部屋
  • キッチン付き
  • 大画面TV
  • ドラム式洗濯機
  • 貸切できる

などですね。
これらはホテルが提供していないサービスや設備ですよね。

理想の物件は見つからない

はい、物件探しの本質3つ目ですが、理想の物件は見つからない事実から目を背けないことです。あなたの予算が潤沢で、かつ人脈が豊富なのであれば、話が異なるかもしれませんが、普通の人に、理想の物件は見つかりません。

なぜなら良い物件というのは、表に出る前に、身内で取り引きが行われるからです。見ず知らずの他人に譲るよりは、すでに信頼できる知り合いに使ってもらった方が大家にとっては楽だからです。

で表に出てくる物件というのは知り合いのフィルターをすり抜けてしまった売れ残り物件というわけです。この時点で、理想の物件である可能性は、だいぶ下がっています。

立地が悪いのか?
賃料が相場より高いのか?
ボロ物件でリノベーションの費用が高いのか?

理由はさまざまですが、理想の物件が見つからないという前提のもと物件探しに取り組み、その結果見つけた物件の中から、勝負するしかありません。

大丈夫です。例え70点の物件でも、あなたらしい切り口があれば事業になりますから。

物件は所有か賃貸、結局どっち?

あなたはすでに宿泊ビジネス用の物件を所有していますか?それとも、これから購入予定でしょうか?もしくは購入ではなく、賃貸で始める予定ですか?

物件を購入して所有する場合でも賃貸で借りる場合でも、宿泊施設の運営は可能です。

少し規模が大きくなりすぎますが、帝国ホテルは株式会社帝国ホテルが、土地建物を所有し人を雇い運営も行っています。一方で東横インは、土地建物をオーナーから借りた上で賃料を払いながら運営を行っています。

あなたが作る小さな宿も、仕組みは全く同じです。それでは、それぞれのメリットデメリットの話をしたいと思います。分かりやすく表を作りました。

民泊の物件の契約は?

民泊物件は所有or賃貸?

開業・運営の自由度

まず開業・運営の自由度ですが、これは物件を所有して運営する方に軍配が上がります。自分自身の物件なので、何をやっても良いからです。

逆に賃貸物件に関しては、そもそも宿運営OKな物件を探すのも大変ですし、仮に運良く見つかったとしても、土地と建物を所有者から借りることになるので、当然所有者の許可なしに自由に改装することができません。また近隣住民との関係性も新たに作る必要があるので、開業及び運営のハードルは、所有物件で運営する場合よりも高いと思います。

初期費用

次は初期費用です。
賃貸でやる場合のメリットですが、所有する場合と比較して、初期費用が少ないことです。物件を購入せずに運営することができるので、土地建物の購入費用が不要だからです。

また初期費用が少ないため、銀行借入も少なくて済み、2軒、3軒と、どんどん多店舗展開して事業を大きくしていきたい場合は賃貸でやることをお勧めします。

リスク

最後にリスクについてですが、賃貸の場合は万が一運営に失敗してしまった場合でも賃貸契約を解約してしまえば、撤退することも容易です。

所有の場合はこの全く逆で、仮に運営に失敗してしまった場合は、撤退が容易ではありません。もちろん初期投資が重いのもリスクが大きい1つの理由です。

というわけで、結論というか僕の意見ですが、ゼロから宿泊事業に参入する場合は、賃貸から始めた方が初期費用も少なく、リスクも低いのでおすすめです。

どっちが正解?普通借家契約と定期借家契約

宿用の物件を大家さんと契約する際は、この「普通賃貸借契約」もしくは「定期借家契約」を結ぶことになります。僕のおすすめは「普通賃貸借契約」です。リスクが定期借家契約より少ないからです。説明していきますね。

まず普通賃貸借契約ですが、いわゆる一般的な契約形態になります。通常、2年とか3年で契約して、借主が引き続き借りたい場合は、契約を更新できます。

一方で定期借家契約とは、契約期間を定め、契約期間が終了すると、基本的には再契約できない契約になります。また借主が途中で契約をやめたい場合でも、契約期間中はダメな場合があります。

簡単な比較表を作りました。

どっちが正解?普通借家契約と定期借家契約

どっちが正解?普通借家契約と定期借家契約

更新の有無

まず、更新の有無ですが、普通賃貸借契約の方は借主が望めば何度でも更新が可能です。大家さん側は、借主が更新を希望すれば断ることはできません。定期借家契約の場合は、期間が満了したら、それ以降更新はできません。もし双方が更新を望んだ場合のみ、再契約という流れになります。

中途解約

次は、中途解約についてですが、普通借家契約では、大体解約の3ヶ月前とか6ヶ月前に貸主に伝えれば解約することが可能です。一方で、大家さん側から基本解約はできません。定期借家契約の場合は、借主が途中で解約したい場合でも、契約期間内は解約できない場合があります。もしくは、契約期間の残りの賃料を違約金として支払い、解約する場合もあるようです。

家賃

家賃に関しては、定期借家の場合は、なんらかの理由で期間が限られているため、その分借りてが少なく、家賃が低く設定されている場合があります。

どちらか、迷われたら基本的には「普通賃貸借契約」を結んでください。
借り手の立場が強いからです。

一番怖いのは、多額のリノベーション費用をかけて開業したのに、定期借家で契約したため、本当はもっとビジネスを続けたいのにも関わらず撤退しなければならない場合です。

即座に開業する方法

あなたが運が良く、即座に宿泊施設を開業できるとしたら、この2つの方法です。

1つは、廃業した宿泊施設の物件を借りることです。
もう一つは宿泊施設の事業譲渡を受けることです。

手前味噌ですが、自分の場合は1軒目と4軒目は廃業した物件でしたし、3軒目は事業譲渡を受けた物件でした。

廃業した宿泊施設物件を借りる

まずは廃業した宿泊施設の物件を借りるパターンですが、いわゆる居抜き物件です。

なぜ即座に開業できるかというと、すでに運営していたので、面倒な許認可の問題がないからです。そして許認可の問題がないということは、それに費やす費用がないということです。

具体的には、水回りの数や消防の火災通報設備の設置ですね。加えて、修繕やリノベーションが不要な場合も多いので、初期投資が少なく開業できるのが魅力です。

また、すでに宿だった物件なので当然「用途変更」も不要です。

なので、まず物件を探す際には、過去に営業していた物件を何とか探せないか考えてみてください。

ただし一点注意点があります。飲食店では顕著なんですが、居抜き物件ということは前の経営者が失敗して廃業した店舗という可能性があります。その失敗した理由はロケーション的に問題があったり、ゲストのニーズを満たせなかった設備の物件かもしれません。その辺は慎重に判断してみてください。

宿泊施設の事業譲渡を受ける方法

次はすでに運営している物件オーナーから事業譲渡を受ける方法です。

さまざまな理由で撤退を考えている宿のオーナーさん、実は多いと思っています。宿ビジネスに疲れてしまった人、赤字を抱えている人、違う道に進みたい人などなど。

でも一度始めてしまうと、なかなかやめられないのが実態です。せっかく作った自分の宿が消えてなくなってしまうのは感情的に難しいですし、現実的に賃貸物件であればスケルトンにする費用も馬鹿になりません。規模が大きければ原状回復に何百万もかかりますから。

なので、気に入った宿があれば、その宿に泊まりに行きオーナーさんと仲良くなったら聞いてみるのも手だと思います。実際にスタッフとして働いてみてからでもいいですね。私の友人はゲストハウスでスタッフとして働き、その後その宿の譲渡を受けました。

私自身も、知り合いのオーナーさんから事業譲渡を受け、宿を引き継いだ経験もあります。

ちなみに事業を引き継いだら許認可はどうなるかというと、運営母体が変わるので、保健所から再度許可をもらう必要があります。それまで宿として運営しているので、許可自体は非常にスムーズに済みますが。

民泊物件の探し方5つ

ここでは具体的な物件の探し方ついてレクチャーしたいと思います。

宿泊ビジネスを始めるにあたって、良い物件を見つけることは最大の難関です。自分自身も一番初めの物件を見つけるまでに1年3ヶ月を要しました。もちろん、ただ運営できる物件を見つけるのは容易ですが、きちんとビジネスで通用する物件を探し当てるのは至難の技です。

もう根気強くやっていくしかありません。
それでは、この順番で行きます。

  • 転貸可能物件サイト
  • 地場の不動産屋
  • 空き家
  • ググる
  • M&Aサイト

転貸可能物件サイト

まずは転貸可能物件サイトです。Google検索で「民泊 転貸 物件」で検索してヒットしたサイトをチェックしてみてください。

例えば、「民泊物件.com」というサイトが出てきます。https://minpaku-bukken.com/
このサイトは民泊用に転貸可能物件のみを掲載しています。

次に「民泊賃貸」というサイトです。このサイトも同様にエアビー物件、民泊物件、転貸物件情報を日本全国で扱っていて、すぐに運営可能な物件ばかりが掲載されています。
https://airbnb-minpaku.com/

また民泊専門の不動産ポータルサイトのミンコレ「mincolleミンコレ」もあります。
https://www.mincolle.com/home/

どのサイトに掲載されている物件も基本的には、民泊可能で転貸可能物件になります。中にはすでに民泊を運営していた物件の譲渡案件もありますので、今すぐ民泊を開業したい方には、修繕やリノベーションが不要な場合も多いので、初期投資が少なく開業できるのが魅力です。

しかし玉石混交なので注意が必要です。

なぜなら、運営物件の譲渡ということは、裏を返せば前の運営者が撤退しているからです。ロケーション的に問題があったり、ゲストのニーズを満たせない設備の物件かもしれません。

地場の不動産屋

次に地場の不動産屋です。
昔から地元に密着した不動産屋さんは、ネットに掲載していない情報を持っている場合があります。直接足を運んで、宿泊業が可能な物件があるか相談しましょう。

ただし、民泊やゲストハウスに関して今だに「不良外国人の溜まり場」(笑)など良い印象を持っていない不動産屋さんも多いため、宿ビジネスについてきちんと理解をしていただくことからスタートする必要もあり、時間がかかるのがネックです。

空き家

日本全国で人口が急速に減っていて、空き家は社会問題です。特に地方に行くと、空き家だらけです。空き家を修繕・リノベーションして民泊にすることも可能です。良さそうな空き家を見つけたら、持ち主を探して突撃してみてください。

持ち主は法務局に行き謄本を取得することで簡単に見つけられます。持ち主に手紙を書いてもいいし、住所が分かれば直接訪問してもいいかもしれません。また地元の不動産屋さんに「あの空き家、借りられないですかね〜?」と相談すると協力してくれる不動産屋もあるかもしれません。

空き家に特化した専門の不動産情報検索サイトや、
https://www.akiya-athome.jp/

Facebookで空き家に特化した情報グループもありますので、探してみてください。https://www.facebook.com/groups/846091572241155/posts/1898427340340901

ググる

次はGoogle検索です。
ちょっとしたテクニックを教えます。

Googleで検索しても膨大な検索結果が出てくるじゃないですか?
古い情報も検索結果に出てくるので、正直全てのページを見てまわったら日が暮れてしまいます。

そこで、【期間指定】テクニックです。

Google検索で民泊物件を探す

Google検索で民泊物件を探す

検索ボックスの下の「ツール」ボタンから、例えば1ヶ月以内に投稿された記事だけを選ぶことができるんですよ。知ってましたか?これを使えば最新の物件情報を調べることができ、情報収集が非常に楽になります。

M&Aサイト

最後はM&Aサイトです。TRANBIが一番有名でしょうか。

「民泊」や「ホテル」で検索すると、たくさん譲渡案件が出てきます。登録制ですが、ビズリーチ・サクシードというM&Aサイトもあります。

物件を借りるときに気をつける5つの点

あなたは民泊ビジネスを始めるための、良い物件を見つけました。早速契約に進みたいと焦るかもしれませんが、この5点を必ずチェックしてみてください。

解約通知のタイミング

まずは、解約通知のタイミングです。

一般的なお家やマンションであれば、退去1ヶ月前に不動産屋さんに解約通知すれば問題ないのですが、事業用の場合3ヶ月や6ヶ月、中にはそれ以上の期間が設定されている場合があります。撤退を決めたとしても、すぐに解約できないので、解約完了まで家賃を払い続けなければなりません。

僕は今まで1店舗解約したことがあるのですが、家賃が税込60万円で、半年間で360万円払ったことがあり、文字通り死にました(笑)

原状回復

事業用の賃貸契約には必ずと言っていいほど、「解約の際は原状回復してください」という項目があります。

原状回復とは、物件を借りた当初の状態に戻してくださいということです。せっかく愛を込めて作った宿なのに、元に戻さなくてはならないのです、辛いですよね…

もちろん大規模にリノベーションした場合は、原状回復だけで何百万という資金が飛ぶ可能性があります。

とはいえ、あなたの物件をそのまま使いたい事業者が見つかれば、事業を譲渡することで原状回復しなくて良い場合もあります。もちろん、大家さんが譲渡を許可した場合に限りますが。。

大家さんの許可

物件の大家さんにきちんと宿泊ビジネスについて説明しましたか?
不特定多数の旅行者が物件に出入りすることを大家さんはきちんと理解されてますか?

また、宿を開業するにあたってリノベーションする場合は、契約前にきちんと大家さんにリノベーションすることを伝えましょう。

正直、まだまだ民泊やゲストハウスの知名度は低いことから多くの物件の大家さんは自身の物件が宿泊施設としての用途で使用されることを快く思っていません。

不特定多数が出入りすることがダメなのか、外国人がダメなのか、犯罪の温床にでもなると思っているのか、理由はそれぞれでしょうが、とにかく宿として使いたいとお願いすると急に態度が変わります。(笑)

マンション管理組合

あなたの借りる物件は管理組合のあるマンションの1室ですか?
そうであれば、必ず管理組合に民泊営業が可能かあらかじめ確認してください。

管理組合のあるマンションの多くで、民泊の運営を禁じている場合があり、注意が必要です。

近隣住民の理解はあるか?

またもしあなたが借りようとしている物件が住宅地にあり、周りが一般住宅であれば注意が必要です。物件契約後に近隣住民から宿の開業を反対され泣く泣く諦めざるを得ない場合もあります。

この場合法的には問題ないので強行突破も可能ですが、周囲の住民に反対されながら運営するのは正直現実的ではありません。なので、このような場合は仲介してくれる不動産屋さんや町内会長にどんな人が周辺に住んでいるか?宿を始めるにあたって問題はありそうか?あらかじめ相談するといいでしょう。

場合によっては、町内に住む人に向けた説明会を開催し、きちんと宿ビジネスについて理解してもらう必要があります。

終わりに

いかがだったでしょうか?物件探すの大変そうですよね?

でもよく考えてみてください。

誰でも簡単に始められるビジネスは、すぐに競争が激しくなって旨味がなくなります。民泊は、物件探しという圧倒的に高い参入障壁があります。だからこそ良い物件を見つけたら、あなただけの勝ち馬になるかもしれませんよ。

By / Published On: 8月 20th, 2022 / Categories: 物件探し / Tags: /